おうちかいだん
手を洗って席に着くと、案の定正面にある戸棚が気になって、チラチラと見てしまう。
いや、それよりも……あの戸棚から垂れた液体が入ったこの料理を食べなきゃいけないのかと思うと、食欲が全くと言っていいほどなくなるよ。
「どうしたの、あんたの好きな回鍋肉でしょ。食べないの?」
「う、うん……なんかお腹の調子が……」
なんの理由もなく食べたくないなんて言うと、お母さんが怒るから、私は体調不良を理由に、白米だけを少しずつ口に運んだ。
おじいちゃんはニコニコしながらそれを食べていて、おばあちゃんは……コンロに料理を置いて、私達に背を向けて夕飯を食べていた。
奇妙な食卓と言わざるを得ない。
やっぱり何かおかずがないと、ご飯だけだと美味しくないよ。
でも、回鍋肉にはあの黒い液体が入ってたし。
食べたいのに食べられないって、こんなにも辛いんだなとため息をついて、戸棚を見上げた私は……それに気付いてしまった。
いや、気付いたなんてものじゃない。
目が合ってしまったのだ。
その戸棚の中に潜む「何か」と。
少し開いたその隙間から、私を見るその目と。
いや、それよりも……あの戸棚から垂れた液体が入ったこの料理を食べなきゃいけないのかと思うと、食欲が全くと言っていいほどなくなるよ。
「どうしたの、あんたの好きな回鍋肉でしょ。食べないの?」
「う、うん……なんかお腹の調子が……」
なんの理由もなく食べたくないなんて言うと、お母さんが怒るから、私は体調不良を理由に、白米だけを少しずつ口に運んだ。
おじいちゃんはニコニコしながらそれを食べていて、おばあちゃんは……コンロに料理を置いて、私達に背を向けて夕飯を食べていた。
奇妙な食卓と言わざるを得ない。
やっぱり何かおかずがないと、ご飯だけだと美味しくないよ。
でも、回鍋肉にはあの黒い液体が入ってたし。
食べたいのに食べられないって、こんなにも辛いんだなとため息をついて、戸棚を見上げた私は……それに気付いてしまった。
いや、気付いたなんてものじゃない。
目が合ってしまったのだ。
その戸棚の中に潜む「何か」と。
少し開いたその隙間から、私を見るその目と。