おうちかいだん
弱ったなあ。おばあちゃんがいる前で、あの戸棚を開けようとしたら止められるだろうし、かと言って洗い物が終わるのを待つのもどうだろう。


おばあちゃんはいつも台所にいる気がするから、洗い物が終わっても明日の準備とか始めそうなんだよね。


となると、内緒にやろうとはせずに、おばあちゃんにも協力してもらった方がいいか。


ただの戸棚だって言ってたし、開けて中を見るだけなら何も言われないはずだ。


「私ね、やっぱりあの戸棚が気になっちゃって。開けて中を見てみたいんだ。私じゃ届かないからほら、ホウキで開けようと思って」


手にしたホウキを前に出して、おばあちゃんに見せつけるようにすると、おばあちゃんの動きがピタリと止まった。


「戸棚を……何だって? 中を見たいってのかい?」


ゆっくりと顔を戸棚の方に向けて、「んー」と鼻を鳴らしながらため息をついた。


私もおばあちゃんにつられて戸棚を見上げる。


「どうしてあんな戸棚の中を見たいんだい? あんなところ、見たって何もありゃしないよ」


「……晩御飯の時も言ったけど、あの戸棚が開いて、中から何かがこっちを見ていたの。それに、お母さんが料理を作ってる時、黒い何かがフライパンの中に落ちてて。何があるのか確かめたいんだ」
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