おうちかいだん
「ほら、やっぱり開かない。古い戸棚だからねぇ。金属が錆びてるんだよ。晩御飯の時に開いてたってのも、きっと見間違いだよ」


安心したようにそう言って、洗い物をする為に流しの方に身体を向けた。


錆びていて開かないなら、じゃあ晩御飯の時に見たあれは何だったんだろう。


見間違いにしてはハッキリと見えていたし、何かがいるんじゃないかって。


そう思ったから、今こうして開けようとしてるんだ。


「絶対に開けてやるんだから」


こうなったら意地でも開けないと気が済まない。


もう一度ホウキを扉のへこみに引っ掛けて、徐々に力を込めていく。


少し、扉が動いたような気がした。


ホウキから手に、何かが破れるような微かな音が伝わる。


え? 何が破れたの?


と、力を緩めた時だった。















バサッ!








と、戸棚の隙間から黒い何かが私の頭上に垂れ下がったのだ。


「ひ、ひぎゃあああああああああああああっ!」


黒くて細い長い物、それが何百、何千と束になってまるでカーテンのように。


これは……まさか髪の毛!?


「お、おばおば、おばあちゃ……おばあちゃん! 何これ、何これ!」
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