エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
お見合いは大失敗!?

 ホテルにレストラン、映画館、ショッピングモール。オフィスや住居まで集まった、六本木の高層ビル。その四十五階にある明るいティーラウンジの窓際席で、私はソワソワしていた。

 これから、人生で初めてのお見合いが始まる。

 時刻は十三時、五分前。ゆったりとした一人掛けソファに腰掛ける私の服装は、清楚を意識した、オフホワイトの総レース膝丈ワンピース。肩甲骨まであるライトブラウンの髪は、毛先をくるんと巻いてきた。

 外見だけは完璧。しかし、仕事とは違い素の自分を見せなくてはならないので、テレビ出演や雑誌の取材よりも格段に緊張している。

 といっても、私は別に芸能人というわけではない。職業は、料理研究家だ。

 昨今の人気レシピは手軽で見栄えのするものが主流だが、私はそれにプラスして、食べてくれる人に真心が伝わるような、ちょっとしたひと手間を加えた料理のレシピを開発している。

 それが多くの人々に受けて、ありがたいことに、今まで七冊出版しているレシピ本はこの出版不況の中でもよく売れている。

 いくつかの雑誌やWeb媒体での連載も持っていて、テレビ番組への出演経験もある。

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