エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

 衣類をクローゼットにしまう作業は、下着などもあるので俺が触れない方がいいだろうと花純に任せ、俺は一旦手を洗うために洗面所に入った。

 そこでふと、例の恥ずかしい歯ブラシセットが目に入る。

 鈍感な花純の気を引きたいとはいえ、改めて見るとやっぱりこのデザイン、露骨じゃないか?

 手を洗いながら悶々と悩み、やっぱり今まで使っていたシンプルなものを出そう、と思い直したその時。

 とくに鍵をかけていなかった洗面所のドアがガチャっと開き、花純がひょっこり顔を出す。

「あの、ここに化粧道具を置かせてもらっても――」

 言いながら彼女の視線が洗面台に移動し、コップや歯ブラシの置かれた位置に固定された。俺は居たたまれなくなり、目元を手のひらで覆い天井を仰ぐ。

「ら、らぶ?」

 馬鹿、見るな。声に出して読むな。

「それはだな、その。店員にごり押しされてやむをえず」

 言い訳する自分の声が上擦っているのを感じ、ますます羞恥心が増す。

 くそ、ダメだ。もう認めよう。自分の意思で買ったって。

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