エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
俺は一度咳ばらいをし、言葉を選んで話しだす。
「と、いうのは嘘で……。こういうの一緒に使えば、お前との共同生活も多少うまくいくかもしれないと思って」
「じゃあ、これは私の引っ越しに合わせて新調したんですか?」
「まあな。店員にごり押しされたのは事実だが、最終的に買ったのは自分の意思だ」
観念して全部白状すると、花純は顔を隠すようにパッと下を向いた。けれど、にんまりと口角が上がっているのだけは隠せていない。
「なんだよ、にやにやして。俺が似合わない品物を買い求めるシーンでも想像して馬鹿にしてるのか?」
「ふふっ。違いますよ」
ゆっくり首を横に振って、花純が俺を見上げる。
「単純にうれしかったんです。司波さんなりに一生懸命悩んで、ふたりで一緒に使うものを選んでくれたんだなぁって」