エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
花純の浮かべたその笑みはあまりに無邪気で、眩しかった。
目がくらむような思いがしてパッと彼女から視線を逸らしたが、ドッドッと胸の鼓動が激しく鳴っているのが耳の奥で聞こえる。
「そんなに喜ぶほどのことじゃないだろ。ほら、化粧道具をしまいにきたんじゃなかったのか? 空いている棚を好きに使え」
無愛想にそう言って洗面所を後にした俺は、扉をパタンと閉めたところでふうっと息をつき、内にこもる熱を吐き出した。
想像以上にきてるな、俺。こんなにもひとりの人間の一挙一動に振り回されるなんて、初めての経験だ。
彼女と同じベッドにいて添い寝で我慢するなんて、本当にできるのか?
そう自分に問いかけると、花純を押し倒してあれこれする妄想が勝手に頭の中に広がりかける。
……って、俺は真昼間からなにを考えているんだ。
思春期ですらこんなふうにサカッた覚えがない俺は、自分の変化に戸惑いを隠しきれず、頭に血が上っていくのを感じる。
とりあえず水でも飲んで冷静になろう。
昂る感情と少々よこしまな欲望に折り合いがつかないまま、俺は足取りも重くキッチンに移動した。