エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
【花純ちゃんってなんの酒が好き? 今夜は目の前でカクテルを作ってあげようと思ってるんだけど】
花純が来るまでリビングのソファでひと休みしていると、今日これから訪れる来客のうちのひとり、柳澤からメッセージが入った。
柳澤は昔バーテンダーのアルバイトをしていた経験があり、現在もカクテル作りは趣味であり特技。その延長で料理にも興味が湧き、花純の料理教室に通うようになったそうだ。
【なんでも好きだと思うが、あまり強いのは飲ませないでくれ。この間、バレンシアとマティーニを一杯ずつ飲んだだけで潰れた】
そう返信すると、すぐに既読がついて返事がきた。
【潰した、の間違いじゃないの?】
【酔い潰れた女を襲う趣味はない】
柳澤のたわけた妄想にムッとして即否定したが、またすぐに別の質問が飛んでくる。
【シラフの花純ちゃんなら襲うってこと?】
その一文で、せっかく落ち着いていた鼓動がまたにわかに乱れた。
まともに答える必要はないと思うのだが、否定の言葉を打つのはなぜか指が拒否した。だからといって肯定したらますますからかわれるに決まっている。