エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

 悩んだ末、【聞こえません】とワニが耳をふさいでいるスタンプを選んで送った。

【はは、図星だな。じゃ適当にカクテルの材料買って行くね】

 語尾にはハートの絵文字がついていて、女子か、と声に出さずに突っ込む。

 柳澤のノリが軽いのは今に始まったことではないが、話していると時々疲れる……。

 俺がスマホをテーブルに置いたのと同時に、ひと通り荷物を整理し終わった花純がリビングダイニングにやってきた。彼女の戦闘服、エプロンを身につけて。

「お腹すきましたね。冷蔵庫の食材見てもいいですか?」

 昼は簡単なものでいいと言ったのに、どうやら本格的に作ってくれるつもりらしい。

 彼女はキッチンの冷蔵庫を覗き、「あ、アレならできそう」と呟く。

 実は花純と知り合ってから、ほんの少しだけ〝自炊してみようか〟という意欲が湧いて、以前より冷蔵庫に食材を入れておくようになったのだ。

 休日に大量の米を炊き、それを一食分ずつ保存容器に入れ冷凍する習慣も身につけた。

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