エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

 花純の手元から微妙に目線を外した俺は、自分の番を意識してガラにもなく緊張していた。

 オムライスに書ける文字数は限られている。短い言葉で、俺の今の気持ちを伝えるとしたら……。

「終わりました! 次、司波さんどうぞ」

 花純は俺にケチャップを渡すと、ギュッと目をつむった。

 かわいい。……と呆けている場合ではない。俺はケチャップの蓋を開け、精魂込めて花純への思いをしたためる。

「いいぞ、目を開けて」
「はい。じゃあ、交換しましょうか」

 お互いに皿を持って、相手の手に渡す。そして期待に胸を膨らませつつオムライスに視線を落とした俺は、わずかに眉根を寄せた。……なんだこれは。

【ときなりさん】

 ケチャップの愛らしい丸文字で書いてあるのは、単なる俺の名前。

 このオムライスは俺用だという意味か? 幼稚園児じゃあるまいし、そんなの、書かなくてもわかりきっているじゃないか。これのどこが恥ずかしいメッセージなんだ?

 困惑したままふと花純を見ると、彼女は彼女でぽかんと間の抜けた顔をしていた。

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