エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

 光希さんを連れて三人でリビングダイニングに移動すると、柳澤さんはキッチンにいた。

 着ていたジャケットを脱いでシャツを腕まくりし、持参した洋酒の瓶や、カクテル作りに使う道具をバーのように並べて満足げだ。

 一方雨郡さんはというと、ジャケットどころかシャツすら脱いで上半身裸になり、リビングの床に手を突いてなぜか腕立て伏せをしている。

 彼の趣味が筋トレだとは聞いていたけれど……普通、他人の家で裸になってまでやる?

「時成さん、いつもあのふたりはこんなに自由なんですか?」
「ああ。前に言っただろう、〝若干迷惑〟だと」

 コソコソふたりで話していると、光希さんが柳澤さんのもとに近づき、興味津々に彼に話しかける。

「バーテンダーのご経験がおありなんですか?」
「ええ。といってもアルバイトですけどね。本格的にカクテル作りにハマり始めたのは、就職した後、趣味で家でやるようになってからで」

 ゆるパーマの前髪をかきあげながらそう説明する柳澤さんの声は、いつもの二割増しくらいイケボだった。

 もしかしたら、光希さんを狙っていたりして。

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