エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
「素敵な趣味ですね。私にも教えてください」
「もちろん。グラスの上下で色が違うカクテルなんてどうです? 写真映えしますよ」
盛り上がる彼らの様子を何気なく見ていたら、隣にいたはずの時成さんがいつの間にか消え、ふたりの間に割り込んでいた。
「柳澤、勝手に人の妹を口説くな」
「え~? いいじゃん、自分だってカクテル使って花純ちゃん口説いたくせに」
「ばっ……! お前、余計なことを言うな」
時成さんが焦った顔でちらりとこちらを振り向き、私は首を傾げた。
なんの話だろう。彼とカクテルを飲んだのは一度きりだけど、別に口説かれた覚えはない。
むしろあの時は、口を開けば子どもっぽいと言われ、おまけに酔いつぶれて迷惑をかけた記憶しかない。柳澤さんが勝手に勘違いしているだけかな。
ふたりの会話を不思議に思っていると、光希さんが私のもとにやってきた。
「花純さん、お兄ちゃんたちは放っておいて準備をしましょう? 私、手伝います」
「あ、ありがとうございます! じゃ、まずは冷たいお料理から並べましょうか」