エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

 用意した料理はダイニングとリビングのテーブルにそれぞれ並べ、各々が自由に取るビュッフェスタイルにした。

 ひと通り皿を並べ終えると、雨郡さんがお祝いに買ってきてくれたシャンパンで乾杯し、食事を始める。

「これ、おいしいですね。それに、白身魚は低脂肪高たんぱくなのでありがたい」

 ホストとしてキッチンと各テーブルとを忙しなく往復していた私に、リビングのソファで食事中の雨郡さんが不意に話しかけてきた。筋トレは食事の前に終えてくれたので、今の彼はきちんと服を着ている。

「お口に合ってよかったです。雨郡さんは体を鍛えるのがご趣味と伺っていたので、白身魚の料理をメニューに入れてみました」

 彼が絶賛してくれた料理は、タラを使ったエスカベッシュ。簡単に言えば、洋風の南蛮漬けだ。

「そう聞くと、ますますうまいですね。司波が職員食堂の定食を味気なく思うのも納得だ」
「職員食堂?」
「ええ。我々が勤める財務省にも社員食堂のようなものがあるのですが、今までは司波もそこの料理を普通に食べていたのに、花純さんと出会ってからわかりやすく箸が進まなくなった。ヤツはすっかりあなたに胃袋を掴まれていますね」

< 124 / 233 >

この作品をシェア

pagetop