エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
雨郡さんは微笑ましそうな目をして、ダイニングで柳澤さんや光希さん談笑中の司波さんを見つめる。上司というより、まるで親のように優しい眼差しだ。
……本当かな。本当なら、ものすごくうれしいけど。
つい私も時成さんをジッと見つめていたら、しばらくして視線に気づいた彼が、椅子から立ち上がってこちらに近づいてきた。
「お前、さっきから働いてばかりで自分は全然飲み食いしてないだろ。少しは楽しめ」
「私なら楽しんでますよ? 今も雨郡さんに面白いお話を聞いたところで」
「面白い話……? まさかとは思いますが雨郡さん、柳澤みたいに余計なことを花純に――」
時成さんがそう尋ねている途中で、ダイニングから「花純ちゃーん」と柳澤さんが私を呼んだ。
時成さんと雨郡さんの会話の続きが気になったものの、「はーい」と返事をして柳澤さんのもとに向かう。
「お呼びですか?」
尋ねながら、さっきまで司波さんが座っていた光希さんの隣の席に腰を下ろした。
「うん。司波が席を外してるうちに、どうしても花純ちゃんに教えてあげたい話があって」
「妹の私でも知らなかったです。兄がそんなにロマンチストだったなんて」