エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
だとしたら、すごく気になることがある。お昼に食べたオムライスの、ケチャップのメッセージ。彼がぐちゃぐちゃにしてしまったけれど、あれも実は甘いメッセージだったのではないだろうか。
「あの、柳澤さんって、フランス語に詳しかったりしませんか?」
「ああ、任せてよ。俺ってばカクテルが作れるうえに語学も堪能なスーパーモテ男だからさ。英語・フランス語・ドイツ語・スペイン語・中国語、なんでもござれだよ」
「えっ。すごいですね!」
驚いて目を見張る光希さんの横で、私は納得していた。お見合いで時成さんが話していたマルチリンガルの同僚って、柳澤さんだったんだ。
それにしても自分で自分を〝モテ男〟と絶賛するのはすでにモテ男ではない気がするけれど……教えを乞う立場なので黙っておこう。
「で、フランス語のなにを知りたいの?」
「今日のお昼の出来事なんですけど」
私は柳澤さんに、私と時成さんがオムライスにお互いへのメッセージをしたためることになった、一連の経緯を説明した。
「時成さんも一度は書いてくれたんですけど、急に不機嫌になってスプーンで塗り広げちゃって読めない状態に。でも、フランス語だというのは確かです。確かスペルは……」