エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

「楽しそうですね、時成さんの職場」

 三人を見送った後、部屋に戻ってテーブルの上を片づけながら、彼にそう話しかける。

「そう見えるのは、今日がオフだからだろ。俺たち主計局の職員は中央省庁の懐を一手に握っている立場だからな。他省庁に嫌われながら、連日頭の痛くなる議論ばかりだ」

 疲れたように話しながら、時成さんも空いた皿を重ねてキッチンに運んでくれる。今日は洗わなきゃいけないお皿がたくさんあるけれど、この家のキッチンは食器洗浄機があるから気が楽だ。

「あの柳澤さんも?」
「当然。アイツ、ああ見えて仕事はちゃんとやるんだ」

 人は見かけによらないものだ。なんて失礼なことを思いつつ、柳澤さんが置いていったお酒の瓶を、中身の入っているものとそうでないものに仕分ける。

 自分ではあまり買わない洋酒などもあり、どんな料理に合うだろうとつい瓶を見ながら想像した。

「それと、今はあまり忙しくないからいいが、予算編成大綱が閣議決定される十二月下旬から、俺たちの部署は死ぬほど忙しくなる。泊まり込みでの残業が続いて、しばらく家に帰れない日もあるが……」

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