エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
【火急の用で外に出る。先に寝ていろ】
その差し迫った文面を見たら、逆に彼が心配になった。
こんな時間に突然出て行くなんて、ご家族になにかあったとか?
【大丈夫ですか? 私にもなにか手伝えることはありませんか?】
【ない。朝までには帰るから心配するな】
そっけない返事を目にした瞬間、今夜は一緒に眠れると期待をふくらませていた胸が、急激にしぼんでいった。
なんだろう、この温度差。ついさっき甘いキスを交わした相手とは思えない。
【わかりました。おやすみなさい】
いったいどこにいるの? なにをしてるの? 本当はそんなふうに質問攻めにしたい。
でも、〝同棲初日から急に彼女面をしやがって〟と思われやしないかと不安で、物分かりのいい返事しかできなかった。
「寝よう」
仕事をしながら彼の帰りを待つという手もあるけれど、それだと結局仕事に集中できなそうなので今夜はあきらめることにした。
明日の朝、帰ってきた時成さんに直接、なにをしていたのか聞けばいいんだ。
無理やり自分を納得させて、寝室に引っ込む。
部屋もベッドもひとりきりでは広すぎて、お風呂上がりで温まっていたはずの体が、指先から次第に冷たくなっていった。