エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

 落ち着きなさい花純。きっと時成さんに他意はなく、寝相が悪くて私の方に来てしまったってだけ。そうに決まってる。……でも、服を脱いでいるのはなんで?

 心の中で盛大な独り言を繰り広げていたら布団が擦れる音がして、時成さんが「ん……」とかすれた声を漏らした。

 思わずごくりと息を呑みベッドの上の彼を見守る。時成さんはけだるそうにシーツに手をついて上体を起こし、まだ眠たそうな薄目で周囲をキョロキョロ見回した。

 やがて床に縮こまって座る私を見つけた彼は、ぼんやりした顔で言う。

「……はよ」

 半開きの唇からぼそっと聞こえた朝の挨拶が妙にセクシーで、ドキッと胸が高鳴った。

 その上、時成さんほぼ裸だし。いつもは七三分けになっている前髪が全部下りているのがなんだか無防備だし。眠たそうで覇気がない感じも、どこか煽情的だ。

「お、おはようございます」

 目のやり場に困りつつ一応挨拶を返すと、時成さんが小さく笑う。

「お前、なんで床に座ってるんだ? しかも正座で」
「い、いえ特に理由は……。それより、時成さんはいつお帰りになったんですか?」
「ん? んー……覚えてない」
「覚えてない? じゃあ、昨夜はどちらに?」

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