エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
その質問に、時成さんの眉がぴくりと反応した。かと思うと、彼は布団をガバッと剥いで、ボクサーパンツ一枚の姿で歩み寄ってきた。
「ちょ、ちょっと……!」
「別にどこでもいいだろ。シャワー浴びてくる」
思わず両手で目を覆った私に、彼は不愛想にそう言い残して寝室を出て行ってしまった。
「えっ? 説明、終わりですか?」
問いかけた時にはすでにドアは閉まっていて、私はやるせない思いで、きゅっと唇を噛む。
結局、昨夜彼がどこでなにをしていたのか、何時に帰ってきたのかもわからないままだ。
でも、もしかしたら知らない方がいいのかな……。ついさっき、部屋を出て行く彼が私の横を通った時、かすかにお酒の匂いがしたのだ。
火急の用って、お酒を飲むことだったの? 誰と? ひとりで?
胸の内に急速に広がっていくのは、モヤモヤした黒い気持ち。
昨日、柳澤さんや光希さんにけしかけられて、時成さんが素直な胸の内を明かしてくれたあの瞬間は、決して夢じゃないはずなのに。
一夜明けたらすっかり彼の気持ちが見えなくなって、置き去りにされた私の恋心がちくちくと痛みだすのだった。