エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

「あの、花純さんの婚約者の同僚の方なんですよね?」
「いかにも。財務省主計局きっての色男、柳澤です」

 聞いたのは伏見くんなのに、柳澤さんはなぜか紗耶香ちゃんに向けてキザっぽい顔を作り、うやうやしく自己紹介をした。紗耶香ちゃんは困ったように愛想笑いをしている。

「あなたのことはどうでもいいですが、婚約者の方に伝えてもらえませんか? 俺たち来週、三人で一泊二日の京都出張に行く予定だったんですが、こっちの女性アシスタントに急な予定が入って、俺と花純さんのふたりで行くことになってしまったと」
「えっ? ちょっと伏見くん!」

 さっきの提案よりさらに余計な脚色が加わってない?

 柳澤さんってこういう話を必要以上に面白がりそうだから、あまり巻き込みたくないんですけど。

「へえ、興味深い話ですね。詳しく聞かせてください」

 案の定、柳澤さんは関心を引かれた様子で食いついた。伏見くんはそんな彼を「じゃあ、少し廊下の方で」と促し、勝手に教室から出ようとしている。

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