エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
「花純?」
困惑した声で時成さんに呼びかけられるが、私は彼の逞しい体にしっかり腕を回したまま、正直な胸の内を告げる。
「すみません、うまい言葉は浮かばないんですけど……どうしても、時成さんを抱きしめてあげたくなって」
時成さんはなにも言わず、お腹の辺りにある私の手に、自分の手をそっと重ねた。そしてゆっくり私の手をさすりながら口を開く。
「俺なら大丈夫だ。お節介な料理研究家が、長年抱いていた料理への負のイメージを、変えてくれたからな」
「え?」
背中越しに聞こえた彼のセリフに思わず顔を上げると、顔だけこちらに向けた彼がふっと笑った。
「ずっと、無理だと思っていた。料理で人の心を動かすなんて」
そう話しながら体の向きを変えた彼は、正面から私を見つめると、大きな手を私の顔に添えた。
「でも、お前の作る料理にはその力があると、俺は身をもって知った。……この意味、わかるな?」
じりじりと顔を近づけてきた彼に尋ねられ、抑えきれないほど鼓動が跳ね上がった。妖しく細められた目の奥に、甘い熱が宿っている。