エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

　その夜は、初めてふたり一緒に、手を繋いでベッドに入った。

　照れくささもあるけれど、好きな人のぬくもりをすぐそばに感じられる、幸福感の方が勝った。

　とくに会話はなかったけれど、繋いだ手から感じるたしかな愛情に静かに胸をときめかせていると、私はふと大事な話をしていなかったことに気づいた。

「そういえば来週の土日なんですけど、一泊二日で京都に出張なんです。その間はご飯を作れなくてすみません」

　時成さんの口からは出張の話が出なかったので、おそらく柳澤さんからなにも聞いていないのだろう。そう判断した私は、ごく普通のテンションで切り出した。

「ふうん……。まさかとは思うが、アシスタントは一緒じゃないだろうな。とくに男の方」

　不機嫌そうに尖った彼の口から伏見君の名前が飛び出したので、少しどきりとした。

　時成さん、なにも知らないで聞いてるんだよね？

　どちらにしろ、私はありのままの真実を話せばいいんだけれど。