エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
「出張、終わったら早く帰ってこいよ」
帰るどころか行くのすらまだ先なのに、私と離れたくないと言わんばかりに強く抱きしめられ、胸がきゅんとした。
「はい。時成さんは、食生活が乱れないように気をつけてくださいね」
そう忠告すると、時成さんは少し考えて顔をしかめた。
「いや、お前がいないんじゃ、多少は乱れるだろ」
「自炊が難しかったら、食事に野菜ジュースを取り入れるだけでもいいです」
「なるほど。それなら俺でもできそうだ」
ぴったり寄り添ってそんな話をしているうちにお互い口数が少なくなってきて、彼の大きな体に包み込まれたまま、私は眠りに落ちた。
それからの出張までの約十日間、時成さんは毎日早く帰ってくるようになった。
私の方が仕事で遅くなる日には、おっかなびっくりで料理に挑戦したりもしていた。
「これは……」
「見ればわかるだろう、納豆とご飯だ」
ある日、先に帰っていた彼が出してくれた夕食は、白いご飯と納豆だけだった。
もちろん用意してくれるだけでありがたいのだが、部屋の中には明らかに別の料理を作っていた香りが漂っている。