エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

「じゃあ、この焦げ臭さは?」
「失敗した肉じゃがの匂いだ」
「えっ、失敗作でもいいから食べてみたいです!」

 あの時成さんが肉じゃがに挑戦するなんて、すごい進歩。

 ほくほくしながらコンロに放置されている鍋を覗いたら、そこにもう肉じゃがの原型はなく、真っ黒な炭となり果てた具材が鍋と一体化していた。

「なるほど。……火事にならなくてなによりです」
「わかったら大人しく納豆ご飯を食え」
「了解です」

 というような失敗もあったものの、時成さんが日に日に料理への関心を高めているのが目に見えてわかった。

 子どもの頃のつらい記憶は簡単には消えないだろうけれど、私との生活の中でだけは、彼にとって料理や食事が、幸せを感じられるものであり続けますように。そう願いながら、毎日の食卓を彼と一緒に囲んだ。

 眠るときは手を繋ぐか、時々ハグとキスまではされたけれど、彼の方からその先へ進もうとするそぶりはなかった。

 そのペースが早いのか遅いのか、恋愛経験のない私には見当もつかない。

 でも、穏やかなスキンシップだけでもちゃんと愛を感じたし、いつかのように時成さんが朝帰りするようなこともない。

 あの日何をしていたのかは聞きそびれたままだけれど、あえて掘り返す必要もないだろう。

 私はそんなふうに思い、彼に寄り添って眠る穏やかな幸せを、毎日受け止めていた。

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