エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
土曜日の午後、美容室でパーティー用のヘアアレンジを済ませると、時成さんが車で迎えにきて、そのまま品川駅に向かってくれた。
「どうですか? パーティー仕様の私」
助手席に乗り込むなり、私は隣でハンドルに片手を預ける彼に尋ねた。
髪型は編み込みのハーフアップ、服装は、パーティー用に新調したミント色のフォーマルドレスに、白のボレロ。
そんな、普段とは違う印象になった私を時成さんに見てもらえるのは、駅に着くまでの間だけ。ぜひとも感想を聞いておかなくては。
「まあ、悪くないんじゃないか?」
「それだけですか? もうひと声……!」
期待のこもった眼差しで彼を見つめると、時成さんは今一度私の全身をしげしげ観察し、前方に向き直るとボソッと呟く。
「かわいいに決まってんだろ」
聞き逃してしまいそうな小さな声だったけれど、ちゃんと聞こえた。
途端に嬉しくなった私は、口元をだらしなく緩ませて図々しくお願いする。
「も、もう一回……」
「調子に乗るな」
時成さんはじろっとこちらを睨み、車を発進させる。その耳がほんのり赤く染まっているのを見つけると、たまらなく幸せな気分になった。