エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

 十五分ほどで車は駅のロータリーに到着した。時成さんが車を停めたところで、私は一泊用の小さなボストンバッグを抱えて挨拶する。

「じゃ、行ってきます」
「可能な限り、こまめに連絡しろよ」
「はい。美味しそうなご飯の写真、いっぱい送りますね」
「嫌がらせか? ……って、前もお前と同じような話をしたな」

 かすかに笑った彼につられて、私もクスクス笑う。時成さんと話していると楽しくて、つい時間を忘れそうになるけれど、そろそろ行かないと新幹線の時間に間に合わない。

「なんだか名残惜しいですが、行きますね」
「ああ。気をつけてな」

 優しい声に送り出され、私は駅に向かった。

 チケットは前もって予約してありすでに手元にあるので、売店で飲み物だけ買い、新幹線のホームへ移動する。

 今回は自由席を選んだがそこまで混雑しておらず、幸運にも二列シートの窓際席を確保できた。

 快適な旅になりそうだと思いながら、座席の上の荷物棚に、ボストンバッグをのせる。それからドレスのスカートが皺にならないように注意しつつ、座席に腰掛けた。

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