エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
「わかった。友達の結婚式でしょ」
スーツの華やかな印象からそう予想すると、伏見くんはすかさず口をすぼめて、「ブー」と不正解の声を出した。
「なんだ、違うの?」
「正解は、花純さんの出席するパーティーに、俺も招待されているからでした~」
「え?」
想定外の答えに、ぽかんとする。
だって、私が泉町子先生のパーティーに招待されているのは伏見くんも知っていて、『今回は連れて行けなくてごめんね』と謝った時も、彼はとくになにも言っていなかったのに。
「驚かせてごめんなさい。正直、参加するか直前まで迷っていたので話してなかったんです。泉先生の前では、俺は『料亭伏見』の跡継ぎとして振舞わなきゃいけないので」
「料亭伏見って……あの、京都の会員制高級料亭の?」
私はますます驚愕した。
完全紹介制で、かつ店の主人である料理長が認めた味覚の持ち主でないと会員になれないというその店は、私のような料理関係者でなくとも一度は噂を耳にしたことがある有名店だ。
伏見くんが、そこの跡継ぎ? それなら、どうしてしがない料理研究家の私に弟子入りなんてしたの?