エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

「正直ショックですが、特定の女性と浮気されるより傷は浅いので、そうなら正直に言って欲しいです。私もできる限り、あなたの期待に応えられる女になる努力をしますから――」

 涙を浮かべながら、ずっと心に閉じ込めていたコンプレックスをぶちまける。

 恋愛初心者の私のペースに合わせて、ゆっくり段階を踏もうとしてくれる彼の気持ちはうれしいしありがたい。

 でも、同時に不安だった。私には手を出すほどの魅力がないんじゃないかって。

「おい待て、勝手に暴走するな。俺は風俗なんて行ってないし、お前を面倒だと思ったことなんて一度もない」
「え……?」

 潤んだ視界の向こうで、時成さんが優しく目じりを下げる。それから私の頭にポンと大きな手をのせ、ゆっくり私を諭した。

「そこまで思いつめてるとは知らなかった。ごめんな。だがお前の想像は、まったく的外れだよ。むしろ逆というか……」

 逆? どういう意味?

 時成さんはキョトンと目を瞬かせる私の目もとに親指を当て、かすかに滲んだ涙を拭う。

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