エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

「お前が大事だから……簡単に、手を出したくなかった。でも、そんな想いとは裏腹に、お前にキスしているだけで理性がどっかにいきそうになる。あの夜はそんな昂りがどうしても抑えられそうになくて、同じベッドで眠れる自信がなかった。だから柳澤の誘いに乗ったんだ」

 少し気まずそうにしながらも胸の内を明かしてくれた時成さんに、私の胸がきゅん音を立てる。

 そうだよ、わかっていたじゃない。彼のそっけない態度は、いつだって愛情の裏返しなんだって。

「しかし、酔った状態で帰宅してお前の寝顔見たら、とうとう辛抱できなくなってな。服を脱いでベッドに忍び込んで、お前に色々やらかそうとしたんだが……結局、そのまま寝落ちてしまった」
「だから、あんな格好で私にくっついていたんですね」

 あの朝の、刺激的すぎる目覚めの状況を思い出して、私は苦笑した。

「ああ。で、自分の中途半端な行動とか、我慢のなさとか、とにかく色んなことで自己嫌悪になってな。お前に合わせる顔がなくて、仕事に逃げたんだ」

< 193 / 233 >

この作品をシェア

pagetop