エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
私は本当に、なんてばかな思い違いをしていたんだろう。
時成さんは、こんなにも私を想ってくれているのに……浮気だ風俗だと勝手に慌てふためいて、不安ばかり膨らませて。
「時成さん」
「ん?」
「疑ってしまったお詫びのしるしに、今すごく料理を作ってあげたい気分なんですけど……」
言いながら、部屋をキョロキョロ見回す。しかしホテルなので当然、私の希望を叶えられるキッチンはない。
「ここでは無理だろうから、帰ってから期待してるよ。とりあえず外に出るか? お前はパーティーで色々食べてきただろうが、俺は腹が減ってるから少し付き合ってほし――」
彼が言い終える前に、私は羽織っていたボレロを脱いで、背中にあるドレスのファスナーに手を掛け、下ろし始める。
時成さんの眉根がぐいっと中央に寄り、怪訝そうに問いかけてくる。
「……なにしてんだよ花純」
「料理は作ってあげられないけれど……代わりに、私を召し上がりませんか?」
震える声で告げるのと同時に、ドレスがストンと足元に落ちた。下着姿になった私を、時成さんが凝視する。
誤解は解けたし、彼の愛情に疑う余地は、もうすっかりない。
でも、だからこそ……大切にされているだけでは足りない。
もっとあなたを知りたいし、私を知ってほしいの。