エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

 されるがままで呼吸を乱していた私は、なにが大丈夫なのか瞬時に理解できなくて、ぽうっとした顔でただ、私に跨ったまま上半身の服を脱ぐ彼を見つめた。

 盛り上がった筋肉、皮膚を持ち上げるように浮かんだ骨や血管。女性である自分とあまりに違う体のつくりに、うっとり目を奪われる。

 しかし、彼がズボンのベルトに手を掛け始めると急にドキッとして、目を逸らして天井を見ながら、カチャカチャと金属が鳴る音を聞いていた。

「花純」

 甘い声で呼ばれて、おずおず視線を彼に戻す。

 シーツの上で私の両手に指を絡めて握った時成さんは、少し切なそうな余裕のない表情で、愛おしそうに私を見つめて言った。

「この先は、目を逸らすのも、閉じるのも許さない。ちゃんと俺を見て、俺を感じろ」
「時成さん……」

 ドキン、心臓が大きく跳ねたその瞬間、私の中に彼がゆっくり入ってきた。

 少しだけ感じた痛みに眉を顰めたら、時成さんがそこに優しくキスを落として、「悪いな、少しだけ耐えてくれ」と苦笑した。

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