エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
ずるい、時成さん……。そんなふうに言われたら、これ以上反論できないばかりか、あなたのこと、もっともっと好きになってしまうよ。
「時成さん、うれしい……。私も、愛しています」
「ああ。わかってる。……お前は俺のもんだ、花純」
蕩けるような目をした彼に囁かれ、唇を塞がれる。
その夜は、初めての行為への不安なんてどこかへ行ってしまうほど、時成さんに際限なく愛を注がれ続け、幸福な気持ちの中で、何度も快楽の波にさらわれた。
翌朝、まだ気持ちよさそうに眠る時成さんをベッドに残して、私はホテルの浴衣に着替えタオルを持った。広々とした大浴場で、ゆっくり朝風呂に入るためだ。
パタン、と部屋のドアを閉めたその時、隣の部屋からも客が出てきたので、なにげなくそちらを見た私は目を丸くした。
「伏見くん? もしかして、偶然隣の部屋だったんだ」
「あ、花純さん……おはようございます」
力なく笑って挨拶した伏見くん。よく見ると、彼は目の下にひどいクマをつけていて別人のようだったのでぎょっとした。