エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
あきらめたようにそう思い仕事中心の生活を続ける中で、雨郡さんと柳澤という飲み仲間ができた。
公務員の特性上、いつ互いが異動や転勤になるかわからないが、彼らとくだらない話で盛り上がるひとときは、肩ひじを張らずにいられる貴重な時間だった。
俺以外のふたりは、時折『彼女が欲しい』だの『結婚したい』だのと言っていたが、俺は内心〝男同士でいるのが一番気楽だ〟と冷めた心境で、ふたりの話を聞き流していた。
……はず、なのだが。
『えっ? 見合い? 榛名花純って……もしかして俺が通ってる料理教室の花純ちゃん? この裏切り者~!』
柳澤に見合いの報告をした時のヤツの反応である。
だが、恨み節を言いたくなる気持ちもわからないでもない。三人の中でもっとも恋愛や結婚に消極的だった俺が、たった一回会った女性に心奪われ、即座に同棲を決めたのだから。
そういった経緯もあり、雨郡さんと柳澤さん、そして家族の中で唯一わだかまりなく話ができる妹には、俺なりに筋を通すつもりで花純を紹介したのだった。