エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
お互いに反省の言葉を口にすると不思議と優しい気持ちがわいて、俺たちは自然と視線を絡ませて引き合うようにキスをした。
どんなに喧嘩をしたって、お前への愛しさは変わらない。そんな気持ちが伝わるように、長い間唇を合わせる。
「あの、時成さん」
「ん?」
唇を離し、息のかかる距離で見つめ合いながら、花純が口を開く。
「私、もうひとつ勝手な行動を取ったんですけど。許していただけますか?」
勝手な行動……?
キョトンとする俺に、花純が覚悟を決めたように告げる。
「この家にご両親を一緒に招待して、私が手料理を振舞うって約束したんです。おふたりとも少し渋っておられましたが、息子のお嫁さんになる人の頼みならって、最後には承諾してくださいました」
「……本当に勝手だな」
彼女の行動力に脱帽し、もはや笑いがこぼれた。
しかし、結婚前に一度話をしなければいけなかったのは事実だ。俺もそろそろ腹をくくらなくては。
「ダメ、ですか?」
「いや。ちょうどいいタイミングだ。お前のお節介に乗っかって、今まで目を逸らしていたものに向き合うことにする」
「時成さん……」
花純がふわっと花のように笑う。それだけでなにもかもがうまくいきそうな気がするから不思議だ。……俺も相当おめでたい男に成り下がったものだ。
心の中でそう呟きつつも、そんな自分が決して嫌いではないのだった。