エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
花純は、ふたりが今でも深い絆で繋がっていると話していたが、俺にはそう思えない。やはり、離婚したあの時にすべて破綻していたのだろう。
そう再確認すると寂しい気持ちにはなったが、息子である俺のためならこうして駆けつけてくれる。それがわかっただけでもよかった。
お互い顔も見たくないという険悪なムードなら困ってしまうが、この程度なら多少気まずくても結婚式に出席してもらえるだろう。
「それでは、本日の特別料理でーす」
テーブルの皿がほとんど空になった頃、キッチンで最後の料理を仕上げていた花純が、お盆の上に茶碗を四つのせて運んできた。
俺と花純の茶碗は、京都で買ってきたお揃いの夫婦茶碗だ。
「あら、なにかしら」
「いい香りがするな」
なんとなく馴染みのある香りだなと思っていたら、両親に続いて俺の前にも湯気の立つ茶碗が置かれる。
三つ葉の緑に、たっぷりゴマをまとった鯛の切り身。
いつか花純に作ってもらってから夜食の定番になった、俺の好物の鯛茶漬けだ。