エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
「……あなた、そんなことを思っていたの? いつも完食はしてくれたけど、なにも言わずにさっさと食べてお風呂に入って寝てしまったじゃない」
「完食するのは美味しいからに決まってるだろ。その満腹で幸せな気持ちのまま眠りたいから、急いで風呂に入って布団の中に」
「言ってくれなきゃわかりません!」
……なんだ? なんでふたりは口論しているんだ?
急に口げんかを始めた両親に面喰って固まっていたら、花純がコソッと俺に耳打ちする。
「お父様の〝決まってるだろ〟っていう言い方、時成さんにそっくりです」
「……言ってるか? 俺」
「言ってます、たくさん」
まったく自覚がないなと首の後ろを撫でていたら、向かい側では父がレンゲを手にし、鯛茶漬けを口に運んでいた。
美味しすぎて驚くだろう。花純が作ったんだぞ。
自分が作ったわけでもないのに得意げにそう思っていたら、父は予想に反して微妙な顔をした。
「……違うんだよな、なにか」