エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
「私も悪かったの。あなたが感謝してくれているのはわかっていたのに。それでも、たまには早く帰ってきて、腕によりをかけた私の料理を食べて欲しい。その思いに固執しすぎて、ひとりで空回りしていたわ」
互いに過ちを認め合う両親の姿に、俺はやっと花純の言うふたりの絆が今でもたしかに結ばれているのが見えた気がした。
俺は、俺の目に映るものだけで両親の関係を勝手に誤解していたのだ。
自分の未熟さにようやく気付いた俺は、自然と首をうなだれた。と、同時に、母が突然明るい声をあげる。
「ねえ花純さん、鯛やご飯は、まだ残っているかしら?」
「ええ。お母様ならそう言うんじゃないかと思って、多めに用意してあるんです」
悪戯っぽく目を輝かせてそう言った花純と連れ立って、母はキッチンに移動する。
そうして、俺の知る限り、今までで一番楽しそうに料理をし始める。その姿は、毎日俺のために料理をする花純の姿と重なって、俺の胸に温かい気持ちが流れた。