エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
昂り始めた気持ちを煽るようにグラスの中のミモザを飲み干し、邪魔なグラスをテーブルに置く。そしてキスをしようと、花純の顔を覗きこんだ瞬間だった。
「あっ、花火!」
「え?」
パッと見開かれた花純の目には、確かに鮮やかな光の残像が映っていた。
首を動かして直接窓の方を見ると、距離は遠いが、次々打ちあがる花火がよく見えた。
「あっちは……隅田川か」
「今日、花火大会だったんですね。この部屋から見えるんだ、素敵……」
すっかり花火に夢中になった花純は、俺の体をそっと押しのけて窓辺に歩いていく。
おあずけを食らった俺は少々ムッとしながらその背中を追い、窓ガラスに手をついてうっとり外を眺める彼女を、後ろから抱きしめた。
「時成さんも見て、綺麗です」
俺の苛立ちに気付かない花純は、窓の景色から目を離さずに無邪気な声をあげる。
お前がそういう態度なら、こっちだってしたいようにするからな。
胸の内でそう呟いた俺は、手始めにすん、と鼻を鳴らして髪の匂いを嗅ぐ。そのまま顔を彼女の耳の脇に移動させ、耳朶に軽く嚙みついた。