エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
「明るい場所に出ると、また一段と綺麗だな」
「えっ?」
「綺麗だと言ったんだ。世界一」
腕を組んだ時成さんにエスコートされながら、ガーデンの小さな階段を上る途中、時成さんが恥ずかしげもなく言った。
うれしい反面、彼らしくない素直な褒め言葉にちょっぴり驚く。
「もしかして、これから雨でも降るんじゃ……」
「お前な。そういうこと言うなら、二度と褒めてやらない」
こんな日でも相変わらず軽口を叩き合い、クスクス笑う。
時成さんの隣にいると、本当に毎日笑顔が絶えない。これからもずっと、そんな日々を送っていけたらと思う。
「それでは、お願いします」
階段の最上段で、小さなブーケを手にくるりと招待客に背を向ける。司会進行の合図で、私は思い切りブーケを後ろに放り投げた。
パッと振り向いた時、ブーケをしっかり両手で受け止めていたのは……なぜか若い女性の集団に紛れ込んでいた、柳澤さん。
「よしっ! これで俺も幸せになれるぞう!」
本気の喜びを爆発させてガッツポーズを決めた彼に、周囲の女性客が苦笑している。
必死すぎて、逆に幸せが遠ざかったのではないだろうか。
そう心配していたら、隣で時成さんも呆れた顔をしていたので、目を合わせた私たちはおかしくなって、またたくさん笑った。