エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
無心でパンケーキを作ること、およそ三十分。こんがりときつね色にやけたパンケーキを皿に盛り、別のフライパンでカリカリに炒めたベーコンをのせれば完成だ。
「うん。香りも見た目も食欲をそそる!」
エプロンのポケットからすかさずスマホを取り出し、記録用に写真を撮る。普段ならいい写真が取れればそこでスマホをしまうが、私は少し考えてスマホのトークアプリを起動した。
一番上に表示された司波さんの名前をタップすると、昨夜彼と交わした会話が画面に現れる。
【榛名先生に連絡した。俺たちがうまくいったという話は喜んでくれたが、同棲はちょっと待ってくれと焦っていた】
【父も複雑なんでしょう。かわいいひとり娘ですからね】
【自分で自分をかわいいと言うヤツは、たいていそれほどでもない】
彼の毒舌ぶりは、直接話している時となんら変わらない。
私は『キシャー!』と毛を逆立てて激怒する猫のイラストのスタンプを返し、それが既読になったところで会話は途切れている。
「この写真を送ったら、どんな反応をするかな」