エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
ふと話が途切れた瞬間、父がわざとらしく咳ばらいをして切り出す。
「ところで花純。司波くんからだいたい聞いてはいるが、随分と彼に気に入ってもらえたそうじゃないか」
「あ、うん。もう出会ってすぐ意気投合しちゃった。会話も尽きないし、彼となら結婚してもうまくやっていけそうな気がする」
尽きない会話の大半はケンカみたいなものなのだが、そこは都合よくぼかして伝える。
「奥手な花純がこんなこと言うなんて珍しいじゃない。お父さん、一緒に住むことも許してあげたら? この子ももう二十七よ」
どうやら母は私の味方のようで、一緒になって父を説得してくれる。
「しかし、結婚前の同棲はなぁ」
「いいじゃない、その方が。うまくいかなかったら結婚しなきゃいいんだし」
「うーん……」
母の身も蓋もない言い方に、父は腕組みをして難しい顔をする。
やっぱり、父の本音は同棲を許したくないみたい。娘として大切にされているが故だと思うと、反抗するのは気が引けるけれど……。