エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

 私はオリーブと彼の顔とを交互に見て、内心慌てる。

 食べろってこと? オリーブは嫌いじゃないから食べられるけど、こんなのまるで恋人同士の戯れだ。

 躊躇いながら彼を見つめると、どこか楽しげな表情をした彼は、ますますピックを近づけてきて、私の唇にちょん、とオリーブをくっつけた。

「口開けろって」
「……はい」

 小さく唇を開き、オリーブを前歯で受け止める。それからピックがスッと抜かれるまでの一瞬、彼の指先と唇との距離が近くて、自然と頬が熱くなった。

 ゆっくり咀嚼したオリーブからはほんの少しマティーニの風味がして、彼の飲んでいたお酒を分け与えられたような感じに、ますます照れくさくなる。

 オドオドしながら紙ナプキンにそっと種を出す私の横で、彼は涼しい顔でお代わりを頼んでいた。

 二杯目のマティーニが彼の前に置かれた頃、私はずっと疑問だったことを彼に尋ねる。

「そ、そういえば」
「ん?」
「料理教室でのアレはなんだったんですか? 生徒みんなが見てる前で密着してみたり、心にもないことを言ってみたり」

 急にキャラが変わって、こっちはびっくりしたんですからね。

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