エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

「味を知らずに頼んだのか？　料理研究家を名乗っているのに、カクテルについては無知なんだな」
「すみません、基本的に家庭料理が専門なもので」
「なら、一杯目の意味に気づくわけもない、か……」
「一杯目の意味？」

　そう言って首を傾げたら、思った以上に酔いが回っていてクラっとした。

　やばい。マティーニってメジャーなカクテルだから、もうちょっと万人向けの飲み物なのかと思っていたけれど、結構効くな……。

「無理なら残せ」
「いえっ。出されたものは絶対残さないのがポリシーですから」

　こうなったら、ひと思いに飲んでしまうしかない。

　私はグラスを傾け、まだたっぷり入っていたマティーニを一気に喉に流し込んだ。

　ぷは、と息をつくのと同時に、全身がぽかぽか温まって、頭がふわふわした。

「ほら、飲めました～。言ったでしょう？　大人だからちゃんとお酒も飲めるって」

　言いながら、おかしくもないのにふふっと笑いがこみ上げた。どうやら酔ってしまったらしい。

「……完全に出来上がったな。すみません、水を」

　司波さんが軽く手を上げ、バーテンダーに水を頼む。

「水よりお酒がいいです」
「ダメだ」