エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
即座に却下され、間もなく運ばれてきた水を仕方なく飲もうとしたのだけれど。
「あれ? 持てないです。なんでかな」
手に力が入らなくて、グラスが持ち上がらない。そんなことすらもおかしく思えて、ますます笑いが止まらなくなる。
「ったく……酔っ払い」
司波さんはブツブツ文句を言いつつ、グラスを持つ私の手に自分の手を添え、私の口もとに近づけた。
大きい手。私の手がすっぽり隠れてしまう。
「ほら」
「ふふっ。司波さんが優しい~」
「馬鹿、黙って飲め」
「はぁい」
こく、と喉を鳴らして水を飲む。お酒と違ってすうっと体に染み込んでいく感じがした。
「少しは酔いが醒めたか?」
「ん~……眠いです」
「は?」
「おやすみなしゃい」
回らなくなってきた呂律でなんとかそれだけ言うと、私はカウンターに突っ伏して心地よく目を閉じた。
『潰れたら置いていくぞ』
意識が完全に失われる直前になって、彼の忠告を思い出す。
まぁいいか。閉店までに目を覚まして、タクシーで帰れば……。
そう決めたところで私の電池は切れ、固いカウンターを枕に深い眠りに落ちていった。