エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
階段を下りてリビングダイニングのドアを開けると、野菜を煮込むいい香りがした。
キッチンに立っていたのは母で、私の顔を見るなりパッと笑顔になる。
「おはよう花純。二日酔いでどうせ食欲がないだろうから、あなたの好きなキャベツのスープ作っといたわよ」
「ありがとう。ねえ、昨日って私、誰と帰ってきた?」
キッチンに入っていき、スープを器によそう母に尋ねる。すると母は驚いたように目を瞬かせ、ため息交じりに言った。
「呆れた。あなたをお姫様抱っこする司波さんの首にギュッと腕を回して、ニコニコ上機嫌だったくせに、なにも覚えていないの?」
「お姫様抱っこ?」
嘘だ。あの司波さんが、私をそんなふうに女性扱いするなんて。
「そうよ。タクシーから降ろしても花純が歩こうとしないから仕方なかったみたい。彼は『飲ませすぎてしまい申し訳ありません』って丁寧に謝っていたけど、こちらこそ『二十七にもなって酔い潰れるなんて、恥ずかしい娘ですみません』って小さくなったわよ」
「ごめん。まったく記憶にない……」