エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
「どんな話してたの?」
「主に、お父さんが彼に絡んでたわね。『いきなり同棲したいなんて娘に下心があるとしか思えん』とか、『本当に花純を幸せにする覚悟があるのかね』とか」
母は当時の父の声や表情を再現し、クスクス笑いながら話す。
いつも穏やかな父がそんなふうに熱くなるなんて珍しい。しかしそれ以上に、司波さんがどういう受け答えをしていたのかが気になる。
「それで、彼はなんて?」
テーブルに身を乗り出して母に尋ねると、母は悪戯っぽく笑った。
「秘密。それは、司波さん本人に聞きなさい」
「え~っ。教えてくれたっていいのに」
「やーよ。まったく、聞いてるこっちが恥ずかしくなるくらい、ご馳走さまって感じだったんだから」
ご馳走さま……? つまり司波さんが、惚気るような発言をしたってこと?
恩師である父の前だから、取り繕って演技をしただけかもしれない。そうは思っても、ほんのり甘い気持ちが心の内側から滲みだして、鼓動が勝手に騒いだ。