エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

「榛名先生、失礼します」

 ちょうどその時ドアがノックされ、数人の番組スタッフが打ち合わせにやって来る。

 私は自然と『料理研究家・榛名花純』の顔になり、丁寧に挨拶しながら彼らを楽屋に迎え入れた。


 生放送は滞りなく終了し、伏見くんとともに関係者への挨拶を済ませて楽屋に戻る。壁の時計は十六時半を指していた。

 バッグの中からスマホを出すと、数分前に司波さんからのメッセージが一件入っていた。

【昨夜の借りを返すチャンスをやろう。日曜の夜、来客があるからうちで料理を作れ】

「また急だな……。しかも偉そうに」

 思わず声に出して呟くと、部屋の隅で帰り支度をしていた伏見くんがこちらを振り向く。

「婚約者さんですか?」
「あっ、ごめんね独り言大きくて。でも当たり。彼ってこういうメッセージもだいたい命令口調でさ」

 そう返事をしながら、一旦スマホをバッグにしまった。後で日曜日の予定を確認して、ゆっくり返事をしよう。

「いつから一緒に住むんですか?」
「具体的な日にちは決まってないけど、連休中には引っ越すつもり」
「そう、ですか……」

 伏見くんは目を伏せて黙り込んだ。

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