エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
昨夜もそうだったけれど、なんだか元気がないみたい。私と司波さんの話を聞いてそんな顔をするってことは……わかった。恋の悩みだ。
私には縁がなかったけれど、伏見くんくらいの年齢は、きっとたくさん恋するお年頃だよね。
恋愛は苦手分野だけれど、師匠として話を聞いてあげるくらいはしてあげたい。
「ねえ、伏見くん。この後、予定がないなら少しお茶でもどう?」
「えっ?」
「私、ピンときちゃった。伏見くん、好きな人のことで悩んでるでしょう」
人差し指を立てて得意げに宣言したら、伏見くんは一瞬呆気にとられた顔をして、それからクスクスと笑いだした。
「あれっ、なんで笑うの? 違った?」
「いや、当たらずとも遠からずというか、合っているけどズレているというか……。でも、お茶はしたいです。花純さん、いつも小倉さんしか誘わないから」
寂しそうな顔で言われて、咄嗟に「ごめん!」と両手を合わせた。仕事の後の食事や、ちょっとした空き時間のお茶に、確かにいつも私は紗耶香ちゃんしか誘っていなかった。
なにしろ男性経験がないので、アシスタントとして伏見くんを雇ったのはいいけれど、仕事以外での接し方には少々戸惑っていて、気軽に声を掛けられなかったのだ。