エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

「別に紗耶香ちゃんだけ贔屓してるとかそういうわけじゃないから、今度からは三人で行こう! もちろん、今日はふたりでお茶しよう!」
「拗ねてるわけじゃないですから、そんなに必死にならなくても大丈夫ですよ。じゃあ俺、近くのカフェ探しますね」
「ありがとう。優しい弟子を持って幸せです」

 そんな会話をしながら楽屋を後にし、テレビ局のビルを出ると、そう遠くない場所に司波さんの住むタワーマンションが見えた。

 今は仕事中でそこに彼はいないのだろうけど、なんとなく立ち止まりジッと眺めていると、伏見くんが私の顔を覗く。

「花純さん?」
「あ、ごめんねぼうっとして。彼、あのマンションに住んでるんだけど、こうして見ると目立つ建物だなぁって」
「……へえ、あそこが」

 伏見くんはぼそっと呟き、目を細めながらマンションに視線を合わせた。

 ……って、なんでアシスタントに婚約者の居住地を教えてるんだろう、私。

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