エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
「そ、そろそろ行こうか! お店どっち?」
「ちょっと待ってください。ルート確認します」
伏見くんは真剣な顔でスマホの地図アプリを操作し、カフェまでの道のりを調べてくれる。
彼の案内についていくと、偶然にも司波さんのマンションのすぐそばのカフェだった。
ログハウス風の明るい店内にはコーヒーのいい香りが漂い、ショーケースには手作りのケーキやスコーンなど、魅力的なスイーツが並んでいた。頭上のメニューを見ると、軽食もいくつかあるようだ。
「わぁ、どうしよう。甘いの三種類くらい食べたい……」
「俺もです。ふたりでシェアしましょうよ」
「いいねいいね」
ショーケースの前ではしゃいでいたら、新たに入店してきた男性が先にレジに並び、注文を始める。
「ブレンドと、ロコモコ丼をテイクアウトで」
うん? どこかで聞いたことのある声。
ふとレジの方に視線を投げると、ちょうど男性もまたこちらを向き目が合った。
瞬間、ドキッと鼓動がジャンプする。
「し、司波さん?」
仕事帰りだろうか。ダークグレーのスーツに身を包み、ビジネスバッグを手にしている。